南北約3300㎞に6800あまりの島々が弓なりに連なる日本。亜寒帯地域の北海道から温帯、亜熱帯の沖縄まで、同じ国にありながら地域によって気候が異なり、豊富な降水量が豊かな森林を育んできました。世界全体の森林率は30%程度である中、国土の約70%を山林が占める日本は、まさに世界有数の森林大国でもあります。

国土は急峻な山地が多く、深い谷を刻みながら幾筋もの河川が流れ、海へとつながります。沿岸部には数多くの港や浦が形成され、奇岩怪石が屹立する荒々しさも呈するなど変化に富んだ海岸線の長さは約3万3900㎞。狭い国土でありながら、海岸線の総距離は世界第6位を誇ります。島国ゆえ、海洋資源にも恵まれているのが特徴で、山地を覆う森林の土壌等から有機物やミネラルなどの栄養素が川を介して安定的に供給され、沿岸部の藻場が育ち、魚類をはじめ多くの海洋生物のゆりかごともなってきました。このような森林と海の結びつきは日本では古くから知られており、「森は海の恋人」という言葉で表されています。

豊かな生態系を育む自然、ただ一方で人を寄せ付けない厳しさを持つのも、また自然です。古くから山を信仰の対象としてきたように、畏敬の念を抱きながら私たち日本人は自然と向き合ってきました。自然の災禍もあるがままに受け入れ、折り合いをつけていくという精神風土がこの国にはあります。自然とともに生きていく、そのための知恵を連綿と受け継ぎ、さまざまな生業、地域性をつくってきました。食文化ひとつとっても多様であり、先人の叡智が今に生きています。和食の基本の一つである出汁文化は日本特有の軟水が育んできたと言えます。

四季がはっきりしている日本では、雨風や雲、山の紅葉、さらには虫の鳴き声からさえも季節の移ろいを感じとり、愉しむ心も大切にしてきました。山河に、里の風景に、自然を畏怖し寄り添ってきた精神の在り処が窺えます。