「世界農業遺産」世界が認める伝統的な農業システム

生産性や効率性の向上を目指す農業の近代化が世界的に進む中で、失われつつある伝統的な農業システムを次世代へ継承していくことを目的に、国際連合食糧農業機関(FAO)が認定する「世界農業遺産」は始まりました。農業システムとは、食料生産のための農業・農法だけではなく、伝統知識、農村文化、生物多様性が保全された土地利用、景観なども含む概念です。世界農業遺産には、国内では現在、新潟県佐渡地域、石川県能登地域、静岡県掛川周辺地域、熊本県阿蘇地域、大分県国東半島・宇佐地域の5つの地域が認定されています。世界農業遺産の認定は、日本の伝統的な農業システムが世界的にも重要であり、次世代に継承すべきものであると世界に認められたことの証です。

国内で始めて認定された佐渡地域は、「生きものを育む農法」を実践することで生物多様性豊かな環境が維持され、農村では能や鬼太鼓など独自の農村文化が発展し、今日に継承されています。

能登地域には、農林漁業によりもたらされる恵み、守り伝えられた文化・祭礼、揚げ浜式製塩法や輪島塗などの伝統技術、白米千枚田のような美しい景観がひろがっています。「能登の里山里海」は、自然と調和した農林漁業と人の営みが育む暮らしそのものです。

掛川周辺地域では、茶生産が近代化される中、農家が手間ひまかけて草を刈り、茶園の畝間に草を敷く「茶草場農法」を今日まで実践し、草地をすみかとしている動植物を育み、豊かな生物多様性を守り続けています。

阿蘇地域では、1000年以上も前から、野焼きや放牧、採草といった人々の伝統的な農業活動により、美しく雄大な草原を維持してきました。阿蘇の草原は、多様な農林産物や希少な動植物、伝統的な農耕文化など、すばらしい宝に恵まれています。

国東半島・宇佐地域では、森林資源であるクヌギから原木しいたけを産み出すという農林水産業の営みが脈々と受け継がれ、里山の良好な環境や景観保全につながっています。

世界農業遺産に代表されるような、自然と農業や人々の営みを通じて作り出され、継承されてきた風景は、見る者を魅了する美しさを備えています。人の手が入ることで守られ、たくさんの生きものと人の暮らしが共にあるところ。そこには自然との調和を図りながら農業を営んできた歴史が刻まれています。 山や里、川や海との連なりのなかに農の風景があるように、農業の営みは自然との共生で成り立っています。

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