「日本人にとって最大の年中行事は正月だといえましょう」と石毛直道氏。1月1日の朝、鏡餅に祈る風習が残っている地方もありますが、この風習はすでに10世紀の文献に記されていることから、それ以前より行われていたことがわかります。石毛直道氏によれば、「古来より、米は『稲魂(いなだま)』が宿る聖なる食べ物とされてきました。米をついて固めた餅は、その霊力が凝縮されたもの、また鏡餅は神社の神鏡をかたどったものです。正月に歳神様が訪れるという言い伝えを残す地方がありますが、歳神様は鏡餅に宿ると考えられていました。1年の稲作が無事で豊作であるよう、鏡餅に祈りを捧げていたのです」

祭りや節会は稲作と切っても切れず、正月以外にも、それぞれの行事にその時だけ食べられる米料理があります。虎屋文庫の所加奈代さんは「1月7日には七草粥、小正月には小豆粥、さらに、上巳の祝い(桃の節句)には草餅や菱餅、春の彼岸にはぼたもち、端午の節句には柏餅やちまき…と、米を使った節目節目の行事食は大晦日まで続きます」と説明します。

また、各地に残る祭りには、祭りずしを始め、郷土色豊かな米料理がバラエティに富んで展開されます。米を神に捧げ、そのお下がりをいただくという習慣はいろいろな形の行事食として、今も各地に受け継がれているのです。