日本の周囲の海には、魚のすみかとなる大陸棚――平ら、あるいはごくゆるやかな傾斜の海底――が発達しています。加えて、三陸沖には暖流と寒流がぶつかる潮目があり、そこでは魚のエサとなるプランクトンが大量に発生します。プランクトンを目当てに小魚が集まり、その小魚をエサとする中型・大型魚も集まるなど、世界的にも魚種が豊富で数も多い豊かな漁場を形成しています。日本は海に囲まれているだけではなく、多くの種類の魚を食べることができる海域を有しているわけです。

この豊かな周辺海域で行う漁は「沖合漁業」と呼ばれています。沖合漁業ではイワシやサバ、サンマ、アジなどの魚がよく獲れます。一方南太平洋、インド洋、大西洋といった遠い漁場に出かける「遠洋漁業」は戦後に発達。遠洋で獲れるマグロ、カツオ、イカも日本の食卓に欠かせない魚となりました。さらに1~2人乗りの小さな漁船で、港に日帰りできる海域で行なう漁を「沿岸漁業」と呼び、秋田沖はハタハタ、サケ、イワシ、能登半島沖はブリ、サバ、スルメイカ、敦賀湾沖はズワイガニなどが有名です。これら遠洋、沖合、沿岸の3種の漁業の発達で、日本人はバラエティに富んだ魚種を享受してきたのです。

また日本では、河川や湖沼での淡水魚の漁も多彩に行われており、清流にすむアユやイワナ、信州名産のコイ、琵琶湖名産のモロコなどが知られています。

こうした魚は土地ごとでさまざまに消費されてきました。「マグロは主に江戸・東京で食べられてきたものですし、土佐ではカツオ、能登ではブリなどが好まれます。京都は内陸の盆地なので、若狭で塩をしたアマダイやサバを運んだり、生命力が強いハモを瀬戸内から取り寄せたり、琵琶湖からの淡水魚も使ったりと工夫をしながら魚を料理してきました」と、京都の老舗割烹「たん熊 北店」の主人、栗栖正博氏。

地域限定でしか獲らない魚も少なくありません。日本で使われる魚のバラエティは、世界に類を見ないほど豊かで変化に富んでいるのです。