魚の鮮度を生かす技

魚は肉に比べて水分が多く、自己消化酵素の働きが活発です。つまり魚は肉に比べて鮮度が落ちやすく腐りやすいのです。

しかし、日本には魚の鮮度を長時間保たせる「活け締め」という技術が古くからあります。活け締めとは、魚の背骨の中に針金を通して脊髄を破壊する処理のこと。脊髄を壊すと、魚の筋肉内の自己消化のスピードが格段に落ちます。それによって魚の鮮度が長く続くのです。
「活け締めはスピードと的確な判断が大事。活け締めの最中に魚が苦しんで暴れたら失敗です」と語るのは水口計則氏。水口氏は明石漁港の魚を毎日京都に運び、活け締めをしてから料亭や割烹に魚を納める、活け締めのスペシャリストです。以下は水口氏に教えてもらった活け締めの手順です。

① 生きている魚を水槽から取り出し、目の上を鉤(かぎ)で一撃する。魚に脳震とうを起こさせて、おとなしくさせる。魚が暴れないよう、すぐに叩く。

② 魚をまな板に置く。エラから包丁を差し込んで、速やかに背骨を断ち切る。尾の付け根の骨も切る。

③ すぐに背骨の中に針金を通して出し入れし、中を通っている脊髄を破壊する。ここでも暴れ出す魚がたまにいるが、ひるまずに押さえ、速やかに脊髄を壊す。

④ 血が固まらないうちに、すぐに常温の塩水に入れて血抜きする。その後、氷入りの塩水に浸け替え、冷やす。

活け締めされた魚は料理店に運ばれ、形や大きさ、身質に応じた方法でさばかれます。さばき方は三枚おろし、五枚おろし、手開き、吊るし切りなどさまざまです。「魚をおろす時は、包丁を入れる回数を最小限に抑えて切るのがポイントです」と、京都の老舗割烹「たん熊 北店」主人、栗栖正博氏。魚の身に余分な力が加わらなければ、それだけ魚へのダメージも抑えられます。

なお活け締めの前提として、魚は活け締めする直前まで水の中で生きていなければいけません。日本では魚を水の中で生かしたまま流通させる体制が整っています。この点は日本と他の国々との大きな違いだといえるでしょう。

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